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フィルム日記Vol.11 Fの元祖 NIKON F編

2016.09.02

こんにちはカメラのキタムラ松本並柳店安藤です。
暑さも和らいで過ごしやすくなってまいりました。
皆さま今年の夏はいかがお過ごしになられましたか?
私はそんなに遠出できたわけではないのですが、地元
信州の山やお隣の新潟にちょくちょく出かけまして
それなりに楽しい夏を満喫するこができました。
ところで夏といえば「終戦」をイメージされる方も多い
のではないでしょうか?
今年は終戦から71年目にあたるそうです。
現在でこそモノが豊かに溢れた時代になっていますが
終戦直後の物資が不足した時代、日本が復興を遂げ
ていくには計り知れない苦労があったに違いありません。
今回はそんな戦後の日本の復興を支えたモノづくり
という観点からmade in Japanの象徴ともいえる1台
のカメラに焦点を当てたいと思います。
それが今回紹介する「NIKON F」。日本光学工業
(現ニコン)が1959年に発売したF一桁シリーズの元祖
となったモデルです。
IMG_1072.JPG
ペンタプリズムが特徴的な初代NIKON F
皆さんご存知のようにニコンの前身、日本光学工業は
光学兵器を開発する国策会社として誕生しました。
よく知られているのは旧日本海軍が建造した戦艦大和
に搭載されていた15m測距儀。42km先まで届いた
という大和の主砲を射撃する際に目標との距離を測る
ために作られた距離計で50kmの測距範囲を確保して
いたそうです。
高度な光学技術を蓄積していた日本光学工業が敗戦後
に光学兵器から転換して作り始めた製品がカメラでした。
NIKON Fが発売される以前、カメラといえばライカや
ニコンS系に代表されるレンズ交換式レンジファインダー
が高級カメラとして認識されており一眼レフカメラはその
下位機種という位置付けだったそうです。
その理由の一つが一眼レフ用の広角レンズの開発が
レンジファインダー機に比べてはるかに遅れていたこと。
一眼レフカメラといえばカメラ内部にレフレックスミラーを
組み込んだカメラのことを指すのはご存知のとおりですが
このミラーが広角レンズにはとても邪魔な存在なのです。
広角レンズといえば35mm判換算で24mmや28mm
といった焦点距離の短いレンズのことですね。
焦点距離とはピントを合わせたときのレンズ(主点)から
撮像面(フィルム面)までの距離のこと。
この距離が短ければ短いほど広い画角を写すことが可能
なのですがミラーが可動する空間を確保しなければならない
一眼レフカメラは必然的にバックフォーカス(レンズ最後端
から焦点面(撮像面)までの距離)やフランジバック(マウント
面から撮像面までの距離)を大きく取らなければなりません。
一般的には35mm判一眼レフで40mm~50mm程度の
フランジバックが必要なのだそうですがそうなると40mm
以下の焦点距離を持つ広角レンズは一見、ミラーが邪魔
して取り付け不可能に思えますね。
一方、ミラーがないためレンズの後端をボディ内部に深く
潜り込ませることができるレンジファインダーカメラには
バックフォーカスの制約がないため様々な広角レンズが
すでに出回っており圧倒的に有利な状況にあったようです。
それでも一眼レフカメラには有利な点もありました。
交換レンズの付け替えによる画角の変化をファインダーで
確認できないレンジファインダーカメラは望遠でのピント
合わせが難しく、逆に近距離ではレンズが実際に写している
像の位置とファインダーから見える像の位置に視差(パラ
ラックス)が発生するというデメリットがありました。
広角レンズというウィークポイントを克服できさえすれば
一眼レフが汎用カメラとして発展する可能性は大いにあった
わけですね。
当時、日本光学が目指していたのはプロユースを前提と
したシステムカメラとしての一眼レフの開発でした。
今、「F」を手にしてみてもこのカメラが「基本性能」の確かさ、
「信頼性」、そして「拡張性」を備えた一眼レフカメラとして
実直に設計されていたことがよく分かります。
IMG_1074.JPG
F初期型に見られる通称「やっこさん」と呼ばれた
日本光学工業の社標。後期型はNIKONの文字が入る
IMG_1075.JPG
超望遠レンズの装着も想定し強度を確保したFマウント。
電気接点を増やしつつも現代まで互換性を保つ規格。
超広角レンズの使用を想定したミラーアップ機構搭載。
IMG_1076.JPG
交換式ファインダーとすることにより露出計を搭載した
ファインダーも換装可能。拡張性を考慮した作り。
IMG_1077.JPG
耐久性を備えたチタン幕シャッター、最初期のモデル
には布幕シャッターもあるそう。
「F」は発売と同時にモータードライブや超望遠レンズ
といった様々なアクセサリーを充実させていくのですが
システムカメラとしての地位を確立するために大きく
貢献したのが昭和35年(1960年)に発売された
NIKKOR-H Auto2.8cmF3.5という広角レンズだった
のです。
IMG_1078.JPG
写真はNIKKOR-H Auto28mmF3.5
今見ればとても平凡なスペックのレンズなのですが当時
はかなりハイスペックな高性能レンズだったようです。
先程も触れましたが一眼レフ用の広角レンズを開発する
ためにはレンズの主点をミラーボックスの内部まで
潜り込ませて撮像面に近づける必要があります。
この点で最初に商品化に成功したのがフランス・
アンジェニー社の「レトロフォーカス35mm(商品名)」と
呼ばれた逆望遠型の非対称レンズでした。
※(レトロ(後ろ)フォーカス(焦点):焦点を後ろに移動
させたの意味)
レンズの前群に大きな凹レンズを取り付けることにより
各方向から入射する光線を大きく曲げ実際の画角に
相当する焦点よりさらに後ろ側に焦点を移動させること
に成功したのです。
それまでの広角レンズといえばレンジファインダー用に
開発された前群と後群が対称型になっている「ガウス
タイプ」が一般的でした。
このタイプのレンズは前群で発生した収差を対称型に
なっている後群で打ち消すことが出来るというメリット
がありました。
そのかわり前群と後群が対称型になっているためレンズ
の主点がどうしても中心付近になってしまい必然的に
撮像面から距離が離れてしまうというデメリットもあり
ました。「ガウスタイプ」ではフランジバックの長い一眼
レフ用の広角レンズを作ることはとても難しかったことが
わかります。
一眼レフカメラのウィークポイントを克服したかに思えた
「レトロフォーカス」レンズを皮切りに各社が広角レンズ
の開発を急ぐことになるのですが実際に28mm程度の
広角レンズを設計しようとすると凸凸凹凸の非対称
レンズ構成では収差をうまく処理できないことが判明、
さらに絞り開放ではフレアが多いという弱点が露呈して
しまったようです。
試行錯誤の末、日本光学の開発担当者は凸凸凹凸の
レンズ構成を凸凹凸凸に変更することでコマ収差を
劇的に補正することに成功したのだそうです。
確立された技術をさらに熟成させることで優れた製品を
作り出すというモノづくりの姿勢は日本人の実直さと
勤勉さを物語っているような気がして頭が下がります。
その後NIKKOR-H Auto2.8cmF3.5を手本として
各社は次々に高性能なレトロフォーカス型の広角レンズ
を開発していきました。
そう考えるとこのレンズの開発意義はとても大きかった
のですね。私はこの夏、この「NIKON F」を片手に
あちこち出かけてきたのですが堅実に作られたカメラ
だという印象を随所で感じることができました。
半世紀以上経過してもしっかり使えるということに感動
すると同時に道具としてのカメラの魅力を再確認できた
気がしました。
良い道具を長く愛用するという姿勢をこうしたフィルム
カメラを通して学ばせてもらっているような気がします。
これからも大切に使っていきたいと思います。
今年の夏、「NIKON F」を使って各所で撮影した写真
を少しばかりアップしたいと思います。
IMG_0774.JPG
iPhoneで撮影 新潟名立谷浜IC付近
img054.jpg
NIKON F+Ai NIKKOR 50/F1.4
img022.jpg
NIKON F+NIKKOR-H Auto50/F1.4
大町市あづみの運動公園にて
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NIKON F+Ai NIKKOR 50/F1.4 小谷村大糸線
img056.jpg
NIKON F+NIKKOR-H Auto 50/F1.4
我が家のニャンコを記念撮影
IMG_1071.JPG
XPERIA Z4で撮影 白馬鑓温泉にて
img039.jpg
NIKON F+NIKKOR-H Auto28mm/F3.5
白馬鑓登山道にて。開放からシャープな写りです。
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NIKON F+NIKKOR-H Auto28mm/F3.5
白馬鑓登山道、落石沢にて並柳登山部皆川さん
IMG_1096.JPG
XPERIA Z4で撮影。NIKON Fとブルーハワイ
おまけの皆川さん 白馬猿倉にて
IMG_0776.JPG
iPhoneで撮影
最初の発売から57年も経つNIKON Fですが完全
フルメカニカルのカメラなのでメンテナンスさえしっかり
すれば今でも全く問題なく現役で活躍できます。
長く愛用できる道具の魅力が詰まったメカニカルカメラ
を今一度見直してみるのはいかがでしょうか?
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